練習で壁を蹴って泳いだ50mは、大会のベストより遅かった。飛び込めば何秒縮まるのか、手動で計っている分はどう考えればよいのか。試合が近づくと気になる比較です。

練習タイムから一定の秒数を引いて、試合のタイムに置き換えることはできません。 スタートの動きだけでなく、時計を動かした瞬間、プールの長さ、泳ぐ前の休憩も違うことがあるからです。練習の数字を捨てる必要はなく、何を計ったタイムなのかを添えて残します。

飛び込みと壁蹴りでは、泳ぎ始めるまでの動きが違う

飛び込みでは、台を離れて空中を進み、入水してから水中の動きと水面の泳ぎにつなげます。壁蹴りでは、水中で壁を押して泳ぎ出します。どちらも最初のひとかきに入る前から動きが始まっていますが、その経路は同じではありません。

USMSのスタート解説は、構え、離台までの動き、空中、入水、その後の泳ぎへの移行を説明しています。飛び込みの差を反応時間だけで考えると、入水や浮き上がりまでの違いを見落とします。

飛び込んだほうが何秒速いかを知りたいときも、最後のタイムだけでは差の内訳までは分かりません。スタート部分を詳しく見るなら、競泳スタートの15mタイムの見方で、どこからどこまで計るのかを確認できます。

ここで扱うのは、主に自由形などで行う飛び込みと、練習での壁蹴りの比較です。背泳ぎの競技スタートやリレーの引き継ぎを、同じ条件として混ぜないでください。また、タイムをそろえるために、飛び込み禁止の一般開放で練習する必要はありません。飛び込みの確認は、許可された環境で指導者のもとで行います。

時計を動かすのは、合図から?足が壁を離れてから?

同じ「壁蹴りの50m」でも、計り始める瞬間が違えば別の測定です。

たとえば、仲間が出した合図に反応して壁を蹴る場合と、泳者が自分のタイミングで壁を蹴り、足が離れたところから仲間が計る場合。前者には合図を受けて出発するまでの時間が入り、後者は壁を離れる前の時間を含みません。

日本マスターズ水泳協会の競泳競技規則では、計時員は出発の合図でストップウオッチを始動し、泳者がゴールしたときに止めます。練習を比べるときも、最初に計時の始点と終点を打ち合わせておくと、記録を読み違えにくくなります。競泳競技規則・第2条9項

ペースクロックで自分のタイムを見る場合も、秒針に合わせて動き出したのか、壁を蹴った瞬間を基準にしたのかを残します。ゴール後に時計へ目を向けて読んだ値は、壁に触れた瞬間を他の人が計った値とは分けておきましょう。ペースクロックの見方では、1分をまたぐ計算も扱っています。

手動と電気計時を、表示の細かさだけで比べない

ストップウオッチに小数点以下2桁が表示されていても、人がボタンを押したタイムと、装置が計ったタイムが同じ条件になるわけではありません。細かく表示できることと、その瞬間をどこまで同じように捉えられたかは別です。

大会では、使用する装置や不具合が生じた場合の扱いまで規則で定めています。日本マスターズ水泳協会の規則も、全自動装置、半自動装置、ストップウオッチを区別しています。「手動だから全部非公式」ということではなく、大会では定められた手続きで公式時間が決まります。競泳競技規則・第11条

練習では、計った人、始点、ゴールを確認できたかを記入します。押すのが遅れたと分かっている場合は、その旨を残し、自分の判断で何秒か差し引いて実測値として保存しないほうが、後から見返せます。

50mの記録には、水路と泳ぐ前の休憩も添える

25mプールの50mにはターンが1回ありますが、50mプールの50mには途中のターンがありません。スタートをそろえても、この違いは残ります。水路が違う記録は、短水路と長水路のタイムの見方を踏まえて分けます。

さらに、セット練習の10本目なのか、休憩を取った後の1本なのかも記録します。次の表は、同じ50m自由形を記録するための架空例です。数値は標準タイムや短縮幅の目安ではありません。

残す項目練習の例大会の例
タイム35秒4034秒80
プール長25m25m
スタート壁蹴り飛び込み
計時仲間が合図から手動計時公式結果の値
泳ぐ前50m×4本の4本目、レスト30秒アップ終了からレースまで35分

差は0秒60ですが、それを「飛び込みで縮まった分」と呼ぶことはできません。表にあるだけでも、出発方法、計時、泳ぐ前の状態が異なっています。

練習の変化を見るなら、まず同じ水路・出発方法・計り方で残した練習同士を比べます。セット中なら、同じ本数目と休憩条件も見ます。練習記録の記入例を使う場合は、備考欄に「壁蹴り・合図から手動」のように追記できます。

申込タイムは、練習の数字を自動換算して決めない

「練習でこのタイムなら、大会ではここを狙いたい」という目標を持つことと、大会に申告するタイムを決めることは分けます。申込には記録の期間や水路、標準記録など、大会ごとの指定があるためです。

大会経験が少なく判断できないときは、手元にある記録を条件付きでチーム担当者へ渡します。「25mプール、壁蹴り、合図から手動で35秒40」のように伝えれば、数字だけより確認しやすくなります。マスターズ大会の申込タイムの決め方も確認してください。

普段の練習は普段の条件で記録し、大会の記録は公式結果として残す。その間の差を、次のレースや練習の記録が増えてから自分の傾向として見ていきましょう。

参考資料

資料確認日:2026年9月6日。