
水泳のスタートを15mで測る|台上時間と入水後の泳ぎの見方
レース動画を見ると、隣の選手より台を離れるのが遅い。でも、浮き上がったときには並んでいる。「反応が遅いからスタートが遅い」とだけ考えると、入水後に起きている違いを見落とします。
スタートは、合図から15mまでのタイムと、その途中の動きを合わせて見ると振り返りやすくなります。ここでは、主にスタート台から出るクロールなどを対象に、スタートを習得済みのスイマーが記録を比べる方法を説明します。
15mタイムは、合図から頭が15m地点を通るまで
Burkhardtらのキックスタート研究では、15mタイムを「スタートの合図から、頭が15m地点へ達するまで」と定義しています。同じ研究で、台上時間は合図から台を離れるまでの時間です。原著のTable 3
つまり、15mタイムには、台上の動作、空中、入水、水中での移動、浮き上がった後の泳ぎが含まれます。15m地点までずっと潜る必要はありません。
練習で測るときも、始まりと終わりを先にそろえます。合図から数えるのか、足が台を離れた瞬間からなのか。15m地点で手先を見たのか、頭を見たのか。ここが違えば、どちらも「15mのタイム」と呼んでいても比較できません。
頭のどの位置を通過と判定したかも、動画を読む人同士で合わせておきます。キャップの先端を使う場合と頭の中央を使う場合を混ぜず、判定したフレームを残すと、後で読み直せます。これは手元の動画を比較するための取り決めで、公式記録の認定方法ではありません。
台を早く離れた試技が、15mでも速いとは限らない
次は、同じ選手の2本を比べるために編集部が作った架空の例です。目標タイムや年齢別の基準ではありません。
| 測った時間 | 試技A | 試技B |
|---|---|---|
| 合図から台を離れるまで | 0.70秒 | 0.80秒 |
| 合図から頭が15mを通るまで | 7.40秒 | 7.30秒 |
| 台を離れてから15mまで | 6.70秒 | 6.50秒 |
台上時間はAの方が短いのに、15mではBの方が0.10秒速くなっています。台を離れた後の時間は、Aが7.40−0.70=6.70秒、Bが7.30−0.80=6.50秒です。
この表から分かるのは、Bが台を離れた後の区間でAとの差を逆転したこと。強く蹴れた、入水がよかった、水中キックがよかった、といった理由までは分かりません。そこは動画で確かめます。
また、合図から台を離れるまでには、動き始めるまでの時間に加え、台を押して離れるまでの動作も入ります。「台上時間が長い」を、そのまま「合図への反応が遅い」と言い換えないようにしてください。結果表にリアクションタイムなどの項目がある場合も、その計測定義を確かめてから並べます。
入水後は、浮き上がりと最初のストロークまで見る
Torらは、エリートの自由形・バタフライ選手による52本のスタートを分析しました。台上・空中の動きに加え、水中で下降・上昇に使う時間や10m通過などと、スタートの成績との関係を調べています。水中局面まで含めて見る理由になる研究ですが、特定の入水角度や潜る距離を全員に指定する結果ではありません。Torらの研究
自分の動画では、泳者を見失っていない範囲から読みます。たとえば、次のような違いなら書き残せます。
- 入水した後、どの位置で水面に戻ったか。
- 水面へ戻ってから、最初のストロークへ続いているか。
- 10m通過の差が、15mで広がったか縮まったか。
浮き上がる位置が変わると、10〜15mの中に含まれる水中と水面の割合も変わります。区間が遅かったという数字だけで、水中キックの強さや呼吸の失敗を決めつけないこと。水中が映っていなければ、その部分は未確認として残します。
水中ドルフィンと浮き上がりの見直し方も、入水後を考えるための関連記事です。タイムのために息を我慢して潜る距離を伸ばすのではなく、習得している動作をコーチと振り返る材料にしてください。
台の設定と計時条件をそろえて、動画を比べる
同じ15mでも、飛び込みと壁蹴りでは出発の条件が違います。壁蹴りと飛び込みのタイムの比べ方で計時開始の違いを確かめ、記録にはスタート方法も添えます。
足を置く前後位置やバックプレートの設定を変えた場合も、その変更を残します。Burkhardtらが競泳選手15人を調べた研究では、慣れた前後の足位置を急に入れ替えた条件で15mタイムが悪化しました。短期の入れ替えを見た結果で、長期練習後の優劣や、全員の最適な足位置を決めたものではありません。足の配置を比較した原著
コーチへ渡すなら、日付、泳法、台の設定、スタート方法、計時の始点・終点を動画と一緒に残すと伝わります。数字と「入水後は見えなかった」という注記を分けておくことも、次の撮影に役立ちます。
スマートフォンの動画では、撮影位置や合図の捉え方でも時間の読み取りが変わります。レース分析用動画の撮り方では、泳者と壁を画面に残し、測れない区間を区別する方法を扱っています。
スタート練習は、許可された場所でコーチと行う
動画で違いが見えても、自己流で入水の深さや角度を大きく変えないでください。スタート練習が認められたプール・レーンで、設備や監督者の指示に従います。
大会当日に初めて台から飛び込むことも避けます。たとえば2026年の日本マスターズ短水路大会・習志野会場では、初出場者や飛び込みを練習していない選手に向け、スタート方法について安全上の案内が出されています。同会場の2次要項
大会ごとの利用方法は、初めての水泳大会の準備からも確認できます。15mの数字は、コーチへ「どこを見てもらいたいか」を伝えるために使いましょう。
参考資料
- Tor E, Pease DL, Ball KA. Key parameters of the swimming start and their relationship to start performance. Journal of Sports Sciences. 2015;33(13):1313–1321.
- Burkhardt D, Born DP, Singh NB, et al. Key performance indicators and leg positioning for the kick-start in competitive swimmers. Sports Biomechanics. オンライン公開2020年、誌面2023年;22(6):752–766.
- 日本マスターズ水泳協会・千葉県水泳連盟. 2026年度日本マスターズ水泳短水路大会 千葉(習志野)会場 2次要項.


