レースを撮ってもらったのに、録画が始まったのは入水した後。最後は電光掲示板へカメラが向いていて、タッチが映っていない。泳いでいる姿は見られても、スタートやゴールのタイミングを振り返るには困ります。

分析用の動画は、合図の前から録画を始め、泳者と壁を見失わず、タッチ後まで切らずに残すのが基本です。ここでは、自分のレースを仲間や家族に撮ってもらう場面を想定し、観客席など許可された場所から残せる映像を説明します。

撮影できる場所を2次要項で確かめる

カメラを構える前に、大会の2次要項や施設の案内で、撮影場所・申請の要否・機材の制限を調べます。観客として入れる場所と、撮影してよい場所が同じとは限りません。

たとえば2026年の日本マスターズ短水路大会・習志野会場では、観覧席での撮影を認める一方、メインプール側のプールサイドでの撮影は禁止しています。公開時の権利者の許諾についても、別に案内があります。これは同会場の規定です。出場する大会の最新版を読み、当日の役員の指示に従ってください。習志野会場の2次要項

撮影を頼むときは、本人とコーチが見るためなのか、SNSにも載せたいのかを分けて伝えます。撮影が認められていても、ほかの人が映る動画を自由に公開できるとは考えず、公開範囲を先に確認します。通路を塞いだり、後ろの人の視界を遮ったりする場所取りも避けます。

出番を取り違えないよう、初めての水泳大会の準備で扱うスタートリストも共有しておくと安心です。

泳者と壁が入る画角で、合図の前から録画する

Aquatics GBの撮影ガイドは、音または光のスタート合図、泳いでいる間の泳者、ゴールでの壁へのタッチを残し、編集していない全編のファイルを用意するよう案内しています。公式の撮影ガイド

撮影者には、種目名・組・レーンに加え、キャップの色など本人を見つける手がかりを渡します。自分の組が始まる前に、その席から対象レーンの両端が見えるかを確かめておきましょう。

泳者だけを大きく映すと、手先や壁が画面の外に出やすくなります。横向きの画面で進行方向に余白を取り、壁へ近づく場面では、泳者と壁が一緒に入る広さにします。プール全体を固定で撮ると本人が小さすぎる場合は、その場からカメラの向きをゆっくり変えて追います。

折り返した瞬間に慌ててカメラを振るより、壁へ入るところから出てくるところまで見渡せる画角を用意すると、ターンを残しやすくなります。ゴールでもすぐに録画を止めず、タッチしたことを画面で確認してから止めます。結果は後で調べられるので、撮影中は泳者を追い続けてください。

測りたい区間に合わせて、距離の目印も残す

同じレース動画でも、何を読みたいかで必要な場面が変わります。

振り返りたいこと映像に必要なもの
スタートから15mまでの時間合図、泳者の頭、位置を確認できる15mの目印
ターンを含む区間の時間区間の始点・終点の目印と、その間の泳者
ストローク数数え始めから終わりまで、判別できる腕の動き

15mスタートの計り方では、頭が目印を通る時点でそろえます。頭のどの位置を見るかも事前に決めておきましょう。ストローク数の数え方では、片腕を1回とするか、左右で1回とするかを合わせます。

世界選手権1500m自由形の分析研究では、カメラの映像をスタート合図に同期する光で合わせ、レーンの距離標識を事前に巻尺で確認していました。単に動画へ線を引いただけの計測ではありません。Polachらの研究方法

観客席から斜めに映したレーンでは、画面上の見た目だけで距離の位置を決めないようにします。泳者を追ってカメラを動かした映像へ、同じ位置の線を置き続けることにも注意が必要です。Kinoveaの計測ガイドでも、カメラが動くと、あるフレームで決めた空間の基準をほかのフレームへそのまま使えないと説明しています。計測誤差を抑える条件

目印が隠れた区間や、反射で見えない水中動作は「確認できない」と残します。見えなかったタッチを、しぶきだけで決める必要はありません。

スロー動画の再生時間を、そのままタイムにしない

まずは通常の動画モードで、録画時間と空き容量を確認しておくと扱いやすくなります。スローモーションを使う場合は、撮影時のフレームレートも記録してください。フレームレートは、1秒間に何枚の画像を記録するかを表す値です。

たとえば一定の60fpsで撮った映像なら、隣り合うフレームの間隔は1÷60で約0.017秒です。ただし、これは画像の間隔であって、タイムを必ず0.017秒の精度で読めるという意味ではありません。合図やタッチが見づらければ、どのフレームを選ぶかに迷いが残ります。

また、撮影時と再生時のフレームレートが違うスロー動画では、プレーヤーに表示された経過時間をそのまま使えない場合があります。Kinoveaの公式資料も、実時間を計算するには撮影時の値で時間を校正する必要があると説明しています。動画の時間校正

計時の始点には、映像で確認できる合図を使います。光を使ったか、録音された音を使ったかも記録し、合図が入っていない動画の始点を推測で補わないこと。動画から読んだ時間と公式タイムは分けて残し、公式結果のラップタイムと照らし合わせます。

元動画に種目・組・レーンを添えて渡す

コーチへ渡すときは、撮影したままの元ファイルを保存し、見てほしい場面はコピー側にメモします。切り抜きや速度変更をした動画だけを残すと、後からレース全体へ戻れなくなります。

添える情報は、大会名・日付・種目・組・レーン・プールの長さ。さらに「奥側のターンは手すりで隠れた」「合図は音のみ」といった撮影条件があると、受け取った人が測れる範囲を判断できます。

次に撮影を頼むなら、「100m自由形の第3組、4レーンです。合図の前から録画し、ターンの壁と最後のタッチまで入れてください。元の動画で送ってください」のように伝えれば、残してほしい場面が具体的になります。

参考資料