練習を続けているのに、自己ベストが変わらない。距離を増やすべきか、フォームを直すべきか、休んだほうがよいのか。タイム一つを見ていると、どれも当てはまるように感じます。

そんなときは、「筋力不足」「持久力不足」と決める前に、以前と今で何が変わったかを記録から探します。総タイムが同じでも、後半の落ち幅が小さくなった、同じペースで余裕があった、という変化が残っているかもしれません。

以下は原因を診断するテストではなく、コーチへの相談や練習の見直しに使う確認方法です。当てはまる項目の数で、弱点や必要な練習量が決まるものではありません。

タイムを比べる前にそろえる計測条件

練習で測った50mと、大会の50mを並べるなら、スタート方法や計測方法も書いておきます。壁を蹴った記録と飛び込みの記録、手動計測と自動計測を同じ条件として扱うと、変化を読み違えます。

プールの長さも別にします。短水路と長水路は、同じ距離でもターンの回数が異なります。昔の自己ベストと現在の記録を比べるときも、短水路・長水路の違いを確認しておくと整理しやすくなります。

記録と一緒に残すこと比較するときの確認点
プール、泳法、距離同じ条件の記録を比べているか
スタートと計測方法壁蹴り・飛び込み、手動・自動を混ぜていないか
測る前の練習メインセット後の計測か、タイム測定に備えた日か
中断や混雑、用具前の人に追いついた、途中で止まった、道具を使った等がないか

毎回まったく同じ環境を用意するのは難しいので、違った点をメモで補います。条件が違う記録を消す必要はありません。「この日は比較しにくい」と分かるだけでも、数字を過大に受け止めずに済みます。

後半の失速とストローク数の読み方

100mの後半が苦しいなら、総タイムだけでなく前後半の通過タイムを残します。前半から速く入りすぎていたのか、ターン前後で動きが変わったのか。撮影が許可される環境なら、同じ区間の動画も手がかりになります。

ただし、「50mは速いのに100mで落ちる」だけでは、有酸素能力の不足と決められません。ペース配分、ターン、呼吸、練習当日の体調など、記録からまだ区別できないことがあります。

ストローク数も、少ないほど必ずよいわけではありません。腕を動かす回数を減らせても、止まる時間が長くなってタイムが遅くなっていれば、目標とする泳ぎに近づいたとは限りません。タイムと一緒に見る必要があります。

たとえばクロールなら、「右手と左手をそれぞれ1回と数えた」「浮き上がってから壁までを数えた」と数え方をそろえます。壁蹴りの距離まで含めてプールの長さをストローク数で割った値は、腕の動きだけの効率を示すものではありません。

動画を人に見てもらうときは、「全体的にフォームが悪い気がする」より、「後半の息継ぎで頭が上がって見える」と場面を指定すると相談しやすくなります。原因や直し方は、映像と実際の泳ぎを見た指導者と検討します。

サークルを回れた日も実際のペースを残す

同じメニューを最後まで泳げても、毎回同じ練習になっているとは限りません。設定したペース、実際のタイム、壁で休めた時間は別々に残します。

たとえば50mを1分サークルで泳ぐ場合、40秒で着けば休憩は20秒、45秒なら15秒です。どちらも次の出発には間に合いますが、泳ぐ速さと休憩時間が違います。これは表記を読むための計算例で、推奨ペースではありません。

その違いを残していないと、「同じ練習をしているのに急にきつくなった」としか振り返れません。前半から設定より速かった、後半ほど休めなかった、と分かれば、次にコーチへ伝える内容も具体的になります。

一方、同じメニューの反復そのものを失敗とする必要はありません。条件をそろえて変化を見るために役立つ場合もあります。メニューを変えるなら、スピードを出す練習なのか、ペースをそろえる練習なのか、今回の目的に合うかを確かめます。セット練習のメニュー例では、目的ごとの組み方を紹介しています。

疲労が続くときは練習量を足す前に相談を

記録が変わらないことと、普段できていた練習が続けてできなくなることは、分けて考えたいところです。泳ぐ回数や距離を増やす前に、疲れ方、睡眠、食事、仕事などの負担も振り返ります。

Halsonのトレーニング負荷に関する総説では、練習の量だけでなく、本人が感じるきつさや睡眠など、異なる情報を合わせて見る考え方が紹介されています。同時に、疲労を確定できる単一の指標はないとも述べています。総説の要旨

IOCの合意声明も、トレーニングや大会に加え、心理的な負担、選手の体調などを含めて負荷を管理することを扱っています。競技者向けの指針であり、社会人マスターズ全員の練習回数を決める基準ではありません。IOC合意声明の要旨

実際の相談では、「最近疲れている」だけでなく、「いつものペースでもきつい日が続いた」「睡眠が短い日と重なった」など、時間の流れを添えると状況を伝えやすくなります。練習以外の負担が変わったことも、記録に残して構いません。

痛みや強い疲労、体調不良が続く場合は、無理に練習を増やさず医療機関へ相談してください。自己ベストが出ないことやチェック項目の数だけで、オーバートレーニング症候群などの診断はできません。

練習を変えたときのメモを残す

体調に問題がなく、練習内容を変えて試すなら、変更前の記録も残します。新しいメニューだけを書いても、何が良くなったのか比較しにくいためです。

たとえば、後半のペースをそろえることが課題なら、「前半を設定より速く入らないようにした」「各本のタイムを記録した」「後半は予定のペースで泳げたが、余裕はなかった」といった書き方ができます。結果が良かった日だけでなく、うまくいかなかった日も、条件と一緒に残します。

速い日が一度あったから、その変更が効いたとすぐに結論づける必要はありません。比較できる練習の記録を重ね、指導者と次の調整を考えます。「何週間で何秒伸びる」という期限も、この情報だけでは決められません。

書く項目が多くて続かない場合は、水泳の練習記録に残す項目から、自分が比較したい内容に絞れます。自己ベストの更新に至る前の変化も残しておくと、続ける練習と見直す練習を相談しやすくなります。


更新履歴:2026年9月5日、根拠のない秒数や項目数による診断、改善時期の断定を削除し、計測条件・泳ぎ・練習内容・体調を個別に確認する構成へ改めました。

参考資料