前回と同じタイムで泳げたのに、今日はずっときつかった。練習ノートが距離と秒数だけだと、その違いは残りません。

RPEは、運動をどれくらいきつく感じたかを本人が評価する方法です。タイムに加えて記録すると、「速く泳げたか」と「どのくらい負担に感じたか」を後から見比べられます。

使う尺度と記入するタイミングをそろえ、練習内容と同じ行に残すところから始められます。数値を高くすることが目標ではありません。

6〜20のRPEとCR10は別の尺度

RPEは「Rating of Perceived Exertion」の略で、日本語では主観的運動強度などと呼ばれます。時計や心拍計が測った値ではなく、自分が感じた運動のきつさを回答します。

ただし、「RPE」と書かれた記録がすべて同じ採点方法とは限りません。BorgのRPE尺度は6〜20、CR10はそれとは異なる尺度です。名称だけでなく、使っている表と説明を確認してください。BorgPerceptionの公式説明

たとえば、ある練習会では6〜20の尺度、別のアプリでは0〜10方式を使っているなら、数字をそのまま一列に並べて比較できません。ノートの先頭に尺度名を書き、途中で変えた場合は変更日を残します。単純に半分にしたり、2倍にしたりして換算するのも避けます。

この記事では、尺度表や各数値に対応する言葉は転載していません。練習会で採用している正規の尺度と説明を、指導者と確認して使ってください。自分で「楽・普通・きつい」と書く感覚メモも役立ちますが、それをBorgの正式な尺度として扱うことはできません。

練習全体のきつさは、毎回同じタイミングで残す

50mを泳ぎ終えた直後のきつさと、ウォーミングアップから最後までを振り返ったきつさは、質問の対象が違います。練習全体について回答する方法が、session-RPEです。

競泳選手12人の20回の練習を調べた研究では、session-RPEによる負荷の値と、心拍に基づく負荷の値などに関連が見られました。水泳の記録に使う根拠の一つですが、この値だけで疲労の原因や必要な休養日数を判定できるという結果ではありません。Wallaceらの研究要旨

また、別の競泳選手を対象とした研究では、練習終了後30分以内に、練習全体のきつさを回答しています。Colletteらの研究・方法

個人のノートでも、終了直後に書く日と数時間後に思い出す日を混ぜず、終了後の決まった時点で残すと比較条件がそろいます。「練習終了後20分」などの時刻を決めておき、遅れた日は実際の記入時刻も添えます。20分が最適だという意味ではなく、記録条件をそろえるための例です。

セット直後の値も残したい場合は、「メインセット直後」と「練習全体」を別欄にします。最後のダッシュ1本の感覚を、練習全体の欄へそのまま移さないようにしてください。

タイム・練習時間・RPEを並べた記入例

次の表は、同じ人が同じ0〜10方式のsession-RPEを使った、編集部作成の架空の記録です。数値に対応する尺度の説明や、推奨メニューを示すものではありません。

共通の条件は、25mプール、クロール50m×4本、1分15秒サークル、道具なし。RPEはどちらも練習終了後20分に回答したものとします。

残す項目1回目2回目
4本のタイム55・56・56・57秒55・56・56・57秒
練習全体の時間40分40分
練習全体のRPE46
本人のメモ特記事項なし前夜の睡眠が普段より短かった

この記録から言えるのは、実測タイムが同じでも、2回目の本人の評価は高かったということです。睡眠のメモは相談の手がかりになりますが、2回分だけで原因を確定することはできません。

練習全体の時間は、アップ開始から最後の泳ぎ終わりまでなど、数える範囲を固定します。セット間の休憩も含めて記録し、着替えや移動時間とは分けます。長い中断があった日は「混雑で10分待った」などと補足してください。

さらに、比較するセットのサークルやレストも残します。同じタイムでも休憩が違えば、条件は同じではありません。表記に迷うときは、サークルとレストの読み方で確認できます。普段のノートへ欄を追加するなら、練習記録の記入例とひな形も使えます。

「RPE×時間」は何を比べる数字なのか

session-RPEを使う研究には、練習全体の評価に時間を掛け、負荷の目安にする方法があります。先ほどの架空例なら、4×40分=160、6×40分=240です。カロリーや心拍数に換算した数字ではありません。

計算を使う場合も、元のRPEと時間を消さずに残します。4×60分と6×40分はどちらも240ですが、長く泳いだ日と短くきつく感じた日では、練習の中身が異なります。同じ積になっても、同じ刺激や回復時間を意味しません。

6〜20の尺度の数値を、この0〜10方式の計算例へ置き換えることもできません。使う方法が決まっていなければ、積を出さず、タイム・時間・きつさを並べるだけで比較を始められます。

いつもの練習がきつい日が続いたら

1回の高い値だけで、練習不足とも疲労の蓄積とも決められません。同じ条件の記録を数回並べ、タイム、休憩、泳いだ量、体調のメモがどう変わったかを見ます。

指導者には「RPEが高かった」だけでなく、「同じサークルでタイムはそろったが、きつく感じる日が続いた」と伝えると、記録を一緒に検討できます。練習内容や計測条件の見直しは、タイムが伸び悩むときの確認点で詳しく扱っています。

痛みや体調不良は、RPEとは別に伝える情報です。数値が低いからといって、異常を我慢して練習を続ける判断には使わないでください。

参考資料