レース動画の区間タイムは、同じ基準で読み取った終点の時刻から、始点の時刻を引くと求められます。15m通過がスタートから8.0秒、25m通過が15.2秒なら、その間は7.2秒です。

先にそろえたいのは、小数点以下の桁数よりも「どこを通過した瞬間か」です。頭で測った区間と手で測った区間、実時間とスロー再生の時間を混ぜると、計算が合っていても比較できません。

この記事では、保存済みの動画を使う手順を説明します。数値はすべて架空の計算例です。水泳の目標をレースの区間ごとに分ける方法で改善箇所を決めたら、その区間から測ってみてください。

最初に、距離の目印と動画の時間を確かめる

動画を複製して作業用ファイルを作り、元の映像は残します。次に、測りたい位置が映っているかを確認します。

  • プールは長水路50mか、短水路25mか。
  • 15mや25mの位置を、会場の設備や確認済みの目印から特定できるか。
  • その位置を通るときに、自分の頭が隠れていないか。
  • 動画は通常速度か。スロー撮影や速度を変えた書き出しではないか。
  • 測る区間の途中にカット、停止、速度変更がないか。

画面の横幅を等分しただけでは、プールの距離を等分したことになりません。斜めから撮ると遠近感が入り、カメラを振ると目印の画面上の位置も動きます。Kinoveaの計測ガイドも、遠近やカメラの動きによる計測条件の違いを説明しています。

距離が分からない場所に「だいたい15m」の線を引くより、今回は確認できる地点だけを測るほうが、次のレースと比較しやすくなります。撮影条件を整えるところから始める場合は、水泳のレース動画の撮り方を参照してください。

通過は頭、ゴールはタッチと決めておく

まず「測る地点」と「その瞬間の決め方」をメモします。長水路50mのレースなら、次のように分けられます。

地点動画で読む瞬間
スタート確認できるスタート合図
15m・25m・35m・45m頭の同じ箇所が、その距離の基準線を通る瞬間
ゴールその泳法のフィニッシュで、手などが壁に触れる瞬間

頭の基準は、例えば進行方向側の先端に統一します。毎回、キャップの中央や伸ばした指先へ変えないことが大切です。研究でも頭の通過を用いた区間分析がありますが、研究用カメラと同期された公式計時の精度を、観客席の動画にそのまま当てはめることはできません。50m競泳のレース分析研究

スタートは、映っている発光信号など、合図を特定できる箇所を使います。音しかない映像では、音が届くまでの時間や映像とのずれが未確認なら、正確な公式スタート時刻と同じとは扱いません。合図が映っていなくても、15mから25mなど、動画内で両端を読める区間は測れます。

なお、長水路の25mは通過地点ですが、短水路の25mは壁でのターンです。また、45mの頭の通過からゴールのタッチまでは、始点と終点の身体部位が違います。このタイムをそのまま「頭が5m進む時間」として速度計算しないようにします。

通過時刻を並べてから、隣の時刻を引く

いきなり区間ごとにストップウォッチを押すより、コマ送りで地点を探し、まず動画内の時刻を記録すると見直しやすくなります。

次は、通常速度の動画でスタート合図が2.0秒、頭の15m通過が10.0秒、頭の25m通過が17.2秒に見えた架空例です。

地点動画内の時刻合図からの経過時間
合図2.0秒0.0秒
頭が15mを通過10.0秒8.0秒
頭が25mを通過17.2秒15.2秒

15〜25mの区間タイムは、17.2 − 10.0 = 7.2秒です。合図からの経過時間を使っても、15.2 − 8.0 = 7.2秒になります。動画の開始時刻とレースの開始時刻を分けて書くと、冒頭の余白を含めずに済みます。

頭が15mを通過した8.0秒と25mを通過した15.2秒を読み取り、その差7.2秒を区間タイムにする図

合図からの経過時間を使った架空例です。頭の同じ箇所を基準にし、終点から始点を引きます。図は通過の瞬間を示す模式図で、泳ぎ方や距離の縮尺は表していません。

前後の区間も同様に計算します。すべての境目を同じ時刻でつなげれば、区間の合計はその動画で測った全体時間になります。公式記録と差が出ても、合計を合わせるために各区間へ差を配らず、動画の合図、タッチ、時間設定を点検します。公式のラップと区間タイムの読み方も一緒に確認できます。

フレーム数で計算するなら、撮影時のfpsを使う

一定間隔で記録された映像では、始点と終点のフレーム番号の差から時間を計算できます。

区間の秒数 =(終点のフレーム番号 − 始点のフレーム番号)÷ 撮影時のfps

例えば、撮影時60fpsの元動画で15m通過が600番、25m通過が1032番なら、差は432フレーム間隔です。432 ÷ 60 = 7.2秒になります。両端の画像を含めて「433枚」と数える計算ではありません。

ただし、この式は元の撮影フレームが一定間隔で残っている場合のものです。可変フレームレートや、コマの間引き・複製を含む書き出しでは、表示された番号を一律のfpsで割る方法が合わないことがあります。元ファイルの情報と使用ソフトの時間の扱いを確かめ、分からない場合はフレーム計算で精密な秒数を出さないようにします。

スロー動画では、撮影時のfpsとファイルの再生用fpsが違う場合があります。仮に240fpsで撮った各コマを60fpsで再生するなら、映像は4倍の長さになります。再生上28.8秒の区間は、実時間では28.8 ÷ 4 = 7.2秒です。すべてのスマートフォン動画がこの倍率になるわけではありません。Kinoveaの時間校正を参考に、撮影条件に合う設定へ直してから読み取ります。

読み取りに迷った箇所も、記録欄に残す

最初は15〜25mなど一つの区間を測り、少し間を置いて同じ箇所をもう一度読みます。違うフレームを選んだら、頭が水しぶきに隠れているのか、基準線が曖昧なのかを確かめます。

記録には、秒数のほかに次の欄を残しておくと便利です。

記録欄記入例(架空)
レース条件長水路・50mバタフライ
ファイル・時間設定元動画A、撮影60fps、通常速度
区間の定義頭の先端が15m通過 → 同じ箇所が25m通過
読み取った位置600番 → 1032番
区間タイム7.2秒
確認メモ25m通過で水しぶきあり、1コマ程度迷った

60fpsの1コマ間隔は約0.017秒ですが、それが計測全体の誤差を保証するわけではありません。距離の特定、視差、始点と終点の選び方でも結果が変わります。ソフトが0.001秒まで表示しても、読み取れた精度以上の差を改善の証拠にはしません。

同じ区間を同じ条件で比較できるようになったら、ストローク数の数え方と合わせて、タイムが変わったときに何が違ったかを見ます。「後半が遅かった」で終わらず、次の練習で確認する場所を一つ決められれば、動画を測った意味があります。