
水泳のドラフティングとは?抵抗が減る理由と距離の注意点
同じペースのはずなのに、先頭を泳ぐときと、誰かの後ろを泳ぐときで疲れ方が違う。前を泳ぐ人が作る流れを利用する「ドラフティング」は、その違いを考える手がかりです。
ただし、研究に出てくる距離を、そのままプールで保つ間隔にはできません。抵抗を測る実験と、人が行き交うコースで安全に泳ぐことは、確かめる内容が違います。一般開放のプールで、効果を得ようと前の人の足元へ近づくことは勧めません。
後ろを泳ぐと、何が変わる?
ドラフティングでは、先行する泳者の後方などにできる流れの影響を受けます。後続の泳者が受ける抵抗が小さくなれば、同じ速さで進むための負担も変わり得ます。
人が実際に泳いだ研究もあります。ChatardとWilsonは、11人に一定ペースで4分間泳いでもらい、単独泳と、他の泳者の後ろにつく条件を比較しました。後ろについた条件では、酸素摂取量や主観的なきつさなどが低下しています。一方、抵抗そのものは別途、身体を引っ張る受動的な測定で調べています。研究の要旨
ここで区別したいのは、「抵抗が何%減った」と「何%速く泳げる」は同じではないことです。測っている量が異なり、タイムへそのまま換算はできません。
たとえば、後ろを泳いで目標ペースを保てた日でも、単独で泳いだ日の記録と条件が同じとは限りません。反対に、先頭へ移ってきつくなったからといって、その日のうちに体力が落ちたと考える必要もありません。順番が変わったことも、記録を読む材料になります。
研究の距離を「安全な間隔」に置き換えない
Silvaらの数値解析では、水中に沈めた動かない人体モデルを使い、先頭の足先から後続の頭までの距離を変えています。実際に腕をかき、キックして泳ぐ状態ではありません。モデル間の距離が短い条件で、後続の抵抗係数が小さくなりました。JSSMの原著
同論文で示される6.45〜8.90mは、曲線の当てはめで推定した値です。一般開放プールで衝突しない間隔を測った結果でも、全員が同じ負荷になると実証した距離でもありません。「この距離なら水流の影響がなく、安全」とは読めません。
距離の数字だけを探すと、何と何の間を測ったのかも抜けがちです。頭同士の間隔、足先から頭までの間隔、壁を出る時刻の差は、それぞれ別の量です。スタートを何秒ずらしたかだけでは、その後も同じ距離が保たれているとは分かりません。
普段の練習では、施設の泳ぐ方向や追い越しの指定を優先します。前の人がターンや休憩で止まる場所も含めて、接触を避けられるように泳ぎます。追いついたときの対応は、プールのレーンマナーで確認できます。
サークル練習の記録には、泳いだ順番も残す
チームで同じメニューを行っていても、先頭と後続、コースが空いていた日と混んでいた日では、比較条件が変わります。負荷をそろえたいなら、間隔の数字だけで調整せず、泳ぐ順番やペースもコーチと相談する材料にします。
次の表は編集部による記録例です。ドラフティングの効果を計算する表ではありません。
| 残すこと | メモの例 |
|---|---|
| 泳いだ順番 | 前半は先頭、 後半は後続 |
| 途中の変化 | 後半に前の人へ 追いついた |
| 実測ペース | 目標だけでなく 各本のタイム |
| 泳いだ感覚 | 順番交代後に 呼吸がきつくなった |
「今日は楽に泳げた」という感覚も、どの場面だったか書くと読み返せます。追いついた後にペースを落としたのか、前の人と同じ速さで泳ぎ続けたのかでも、記録の意味は違います。小さな差をすべて水流の効果と決めつけず、休憩や疲労の違いも残します。
ペースと休憩の書き方は水泳の練習記録の記入例を使えます。メニューを組む段階では、セット練習の目的別の例と照らし、タイムを比較したい日なのか、集団で泳ぐ技術を習う日なのかをコーチへ伝えると相談が具体的になります。
集団泳を練習するなら、指導者と実施条件を決める
ドラフティングを学びたい場合は、オープンウォーターの練習会など、指導者が管理する場で相談します。前の人を見失わないことに加え、進路、周囲、呼吸の余裕も同時に扱う技術だからです。
U.S. Masters Swimmingの指導者向け解説も、練習前の安全説明と、接触を伴う練習が難しい人への代替を求めています。一般利用者がいる場所で、知らない相手を追いかける練習への案内ではありません。USMSの指導者向け解説
申し込む前に、次の点を主催者へ確認しておくと、当日の内容を判断できます。
- 自分の泳力で参加できるか
- 練習場所と監視・救助の体制
- 接触が不安な場合の別メニュー
- 困ったときの合図と練習を抜ける方法
屋外では前の泳者だけでなく、水温や天候、出入りする場所にも準備が必要です。Swim Englandも、管理された場所やグループの利用、経路と入退水場所の計画を案内しています。屋外で泳ぐときの安全案内
前の人についていけたかだけを成功の基準にせず、周囲を確認できたか、無理に追い続けなかったかも振り返ります。距離を詰めることより先に、参加する練習で何を学ぶのかを指導者と共有しておきたいところです。
参考資料
- Chatard JC, Wilson B. Drafting Distance in Swimming. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2003;35(7):1176–1181.
- Silva AJ, et al. Analysis of Drafting Effects in Swimming Using Computational Fluid Dynamics. Journal of Sports Science and Medicine. 2008;7:60–66.
- Heggy T. How to Help Your Swimmers Learn to Draft. U.S. Masters Swimming. 2020-02-17.
- Swim England. How to stay safe swimming outdoors. 2018-11-27.


