泳げない日に筋トレを足したい。でも、スクワット、腕立て伏せ、プランクを全部やる時間はない。そんなときは、水泳で改善したいことと、陸上で今できる運動を結び付けて考えると選びやすくなります。

陸トレで扱う重さが増えても、そのまま泳ぐタイムが縮むとは限りません。反対に、「筋肉が増えると泳ぎが遅くなる」と一律に避ける理由もありません。種目名だけで良し悪しを決めず、筋力、動作、練習後の疲れ方を見て組み合わせます。

ここで紹介するのは、運動制限のない大人が陸トレを検討するときの考え方です。痛みの治療や、競技者向けの個別プログラムではありません。

陸トレの筋力向上は、泳ぐタイムにもつながる?

競泳選手を対象にした研究では、陸上の筋力トレーニングを水中練習と組み合わせて、泳ぐ力や記録の変化を調べています。

Aspenesらの研究では、20人の競泳選手を対象に、通常練習へ筋力トレーニングと高強度の持久系練習を加えた群と、通常練習を続けた群を比較しました。11週間後、追加した群では陸上の筋力、体を固定して泳ぐテストでの力、400m自由形の成績が対照群より改善しました。一方、50m・100mの成績には有意な改善が認められませんでした。研究本文

これは、筋トレだけを増やした実験ではありません。参加者は日常的に多く練習している競泳選手で、指導を受けながら取り組んでいます。同じ回数をこなせば大人初心者やマスターズにも同じ変化が出る、という使い方はできません。

自分の練習なら、ジムでの記録とプールでの記録を別々に残します。重さや回数が増えたのか、泳ぐペースやターン後の動きにも変化があったのか。両方を追うことで、陸トレを続ける目的がはっきりします。

自宅とジムで選べる筋トレの例

ACSMが2026年に公表した健康な成人向けの指針では、自重やゴムバンドなども筋力を高める手段に挙げています。目的や経験に合わせて負荷を調整する考え方で、全員に同じ器具や複雑なプログラムを求めてはいません。ACSMの公式解説

以下は、指導者とメニューを相談するときの候補です。各種目の水泳タイムへの効果を保証する一覧ではありません。

練習する動作自宅での候補ジムで相談できる候補
膝と股関節を曲げ伸ばしする椅子からの立ち座り、支えを使った浅いスクワットスクワット、レッグプレス
腕で押す壁に手をつく腕立て伏せチェストプレスなど、動きを確かめやすい種目
腕で引く固定方法を確認したチューブでのローイングケーブルローなどの引く種目
手足を動かす間の体幹を支える姿勢を保てる形に調整したプランクなど指導者に姿勢を見てもらい、負荷を調整する

筋トレが久しぶりなら、椅子からの立ち座りや壁での腕立て伏せも入口になります。椅子は滑らず、車輪がなく、安定したものを使います。動作の例はNHSの筋力運動ガイドで確認できます。

チューブは引く強さだけでなく、劣化や固定部も確かめます。種目に慣れていない段階で、水中のストロークそっくりに腕を動かそうとする必要はありません。泳法名から種目を決めるより、動作を理解して続けられるかを優先します。

回数と重さは、フォームと疲れ方に合わせる

同じ腕立て伏せでも、壁で行う場合と床で行う場合では負荷が違います。「全員20回」「肩の運動は必ず軽いダンベル」と決めても、本人に合う強さにはなりません。

始めは、動き方を確かめられる負荷にします。毎回限界まで続けることを必須にはせず、狙った動作を保てなくなる前に区切ります。慣れてきたら、同じ種目の回数、重さ、姿勢のどれを変えるかを決め、変更内容を記録します。複数を一度に増やすと、何が負担になったのかが分かりにくくなります。

たとえば壁での腕立て伏せを続けているなら、「腕を曲げるたびに腰が反る」「前回より余裕を持って同じ動作ができた」といった記録でも役立ちます。回数だけを追って動きが変わってしまうより、比較しやすくなります。

重い負荷を使う種目やジャンプを加えるときは、経験のある指導者に動作と周囲の環境を確認してもらいます。痛みを我慢して回数を埋めたり、痛む部位を強く伸ばして解決しようとしたりしないでください。痛みや体調に不安があれば、運動を中断して医療者へ相談します。

水中練習の予定から陸トレを配置する

「週に何回できるか」だけでなく、前後にどんな水中練習があるかも予定表に書きます。泳ぐ日と陸トレの日を分けても、疲労の影響まで切り離せるわけではありません。

たとえば、週末にタイムを測る予定があるなら、直前に初めての種目や大量の陸トレを追加すると、いつもの泳ぎと比較しにくくなります。まず普段の練習期間で試し、翌日の泳ぎや疲れ方を確かめておくと予定を立てやすいでしょう。

同じ日に両方行う場合も、「必ず水泳の後」「必ず筋トレが先」と固定せず、その日の優先課題を指導者と共有します。水中でフォームを直したい日なのか、陸上の筋力を伸ばしたい日なのかで、時間の使い方は変わります。

水中メニューの目的がまだ曖昧なら、セット練習の組み方とメニュー例から予定を見直せます。泳ぐ距離だけでなく、ペースと休憩まで含めて書くのがポイントです。

重さが増えてもタイムが変わらないとき

陸トレの記録が伸びたのに泳ぎが変わらないと、もっと筋トレを増やしたくなります。ただ、水泳の記録だけでは、筋力が足りないのか、技術なのか、疲労が残っているのかは分かりません。

比較するなら、同じプール、同じスタート方法、近い練習条件での記録を使います。動画があれば、後半に泳ぎが変わる場面や、ターン前後の動きも指導者と確認できます。プランクの保持時間や筋トレの重量を、水泳の能力を判定する合格点にする必要はありません。

原因を決めつけずに記録を読み直す方法は、水泳のタイムが伸びないときの確認点にまとめています。陸トレを足すか減らすかも、水中で何を変えたいのかに戻って判断できます。


更新履歴:2026年9月5日、筋肥大・種目・負荷に関する一律の断定を改め、一次研究と一般成人向けの指針を区別して構成を見直しました。

参考資料