50mを20本泳ぐか、100mを10本泳ぐか。どちらも合計1000mですが、「長く泳ぐほうが持久力に効く」「短く区切ればフォームを保てる」と、距離だけで選んでいないでしょうか。

練習を比べるには、1本の距離に加えて、ペースと休憩時間を見る必要があります。 また、その場の疲労が少ないことと、数週間後にタイムが伸びることは別の結果です。

この2つの距離を比較した研究を確認しながら、次の練習で何を記録すると判断しやすいかを整理します。研究のメニューは比較条件として紹介するもので、全員に勧める本数・強度ではありません。

ペースと休憩時間で変わる練習の負荷

50m×20本も100m×10本も、掛け算すると1000mになります。ただ、この数字だけでは、どのくらいの速さで泳ぎ、何秒休むのかが分かりません。

たとえば同じ50mでも、1本ごとのタイムをそろえる練習と、毎回違う速さで泳ぐ練習では確認する内容が変わります。「50mだからスプリント」「100mだから持久力」と決める前に、メニューを書いた人の意図を確かめたいところです。

休憩の表記も分けて読みます。レストは、泳ぎ終わってから次に出発するまでの時間。サークルは、出発から次の出発までの時間です。

計算例として、50mを40秒で泳ぎ、1分サークルで出発するなら、休憩は20秒です。同じサークルでも45秒かかれば、休憩は15秒になります。一方、20秒レストなら、泳ぐ時間が変わっても休憩は20秒です。いずれも推奨ペースではなく、設定を読むための例です。

時計の読み方から確認したい場合は、サークル・レストなど練習メニューの表記ガイドに、出発時刻の計算例をまとめています。

「1000mを終えた」という記録に、ペースと実際の休憩時間を足す。それだけでも、前回と何が違ったかを振り返りやすくなります。

200mレースペースで泳いだときの疲労と回復

Cuenca-Fernándezらの研究は、全国レベルの競泳選手14人が、50m×20本と100m×10本の両方を別の機会に行う比較です。合計距離は1000m、泳ぐペースは個人の200mレースペースを基準とし、運動時間と休憩時間の比を1対1に設定しました。

100mの条件では終盤に目標ペースからの遅れが見られました。50mの条件は練習後の血中乳酸値が低く、疲労の指標として測ったジャンプ高の回復も早い結果でした。研究の要旨

ここで分かるのは、この参加者と設定で生じた、練習中から終了後数分までの反応です。長期間続けた場合の記録向上や、一般のマスターズ全員に適した距離を比較した研究ではありません。

また、ジャンプ高やストローク数の測定から、疲れた状態で泳ぐと脳に損傷が残る、といった結論は出せません。フォームのどこが変わったかを知るには、その動作を別に確認する必要があります。

この研究を自分の練習に照らすなら、「終盤も設定したペースで泳げたか」が一つの確認点になります。50mに変えた事実だけで質が上がったと判断せず、実際のタイムを見ます。

8週間後の100m・400mタイムの変化

Dalamitrosらの2016年の研究は、元競泳選手24人を、50mの練習群、100mの練習群、対照群の3群に分けて調べています。上の研究とは別の参加者・メニューです。

練習群距離・本数レスト
50m群50m×12〜16本15秒
100m群100m×6〜8本30秒

総距離と運動強度をそろえた両群で、100m・400mの成績や有酸素能力の指標が改善しました。介入前の値を調整した群間比較では、50m群と100m群の間に統計的な有意差は検出されませんでした。研究の要旨

ただし、これは「どんな設定でも効果が等しい」という証明ではありません。24人を3群に分けた規模で、8週間の特定のプログラムを調べた結果です。差が検出されなかったことと、実用上の差がないと確かめたことは区別します。

50mの泳タイムには変化が見られませんでしたが、「有酸素練習では50mが絶対に速くならない」と範囲を広げることもできません。この期間、この対象者、このメニューで観察された結果として読みます。

どちらの研究も、年齢や競技歴、練習頻度が幅広いマスターズ全体を代表するものではありません。研究に出てきた本数を、そのまま自分の基準にする必要はありません。

練習記録に残すペース・レスト・体調

50mと100mのどちらが練習の目的に合っていたかを振り返るには、設定と実際の泳ぎを記録しておくと比較できます。以下は、研究で効果が検証された練習メニューではなく、記録する内容の例です。

  • 1本ごとのペースをそろえられたか。 設定タイムと各本の実測タイムを残します。
  • 100mの途中で泳ぎが変わったか。 前半・後半の50m通過タイムと、気づいた動作を残します。
  • 後半に休憩が足りなくなったか。 サークルと実際に休めた秒数を残します。
  • 前回よりきつく感じたのはなぜか。 当日の体調、練習前の疲れ、泳いだ感覚を残します。

たとえば「50mならそろったのに、100mでは後半が遅れた」という記録があれば、途中で止まらず泳ぐ区間の違いを、次に検討できます。ただし、同時にペースや休憩も変えていたなら、距離だけが原因とは言い切れません。

逆に、100mを終えたことだけを成功の基準にすると、目標タイムを保てたのか、予定より休憩を増やしたのかが残りません。距離を延ばすことと、今回の目的を満たすことを分けて考えます。

体調や練習前の疲れも毎回同じではありません。普段の設定に合わない日は、本数、ペース、休憩のどこを見直すか、指導者がいれば記録を見せて相談します。ここに一律の「50mなら安全」「100mなら上級者向け」という線引きは置けません。

50mと100mを交互に行えば停滞が解消する、という結論も、今回の2本の研究からは出せません。距離を変えるときは、何を変え、何をそろえたかが分かる記録にします。数週間の変化を見るなら、1日の疲労感だけでなく、継続して測ったタイムと合わせて判断します。

目的に合わせたセットの組み立て方は、水泳のセット練習メニュー例にまとめています。


更新履歴:2026年9月5日、原著のペース設定と、疲労・長期的な練習効果に関する説明を訂正しました。同日、見出しを変更し、練習記録について重複していた章を統合しました。

参考資料