大会が近づいたとき、いつも通り泳ぎ込むか、休みを増やすか。距離を減らすと準備が足りない気がして、予定より多く泳ぎたくなることがあります。

テーパーは、大会に向けて練習の負荷を減らし、それまでに身につけた能力を保ちながら疲労を軽減しようとする調整です。計画では「泳ぐ量」「泳ぐ強さ」「プールへ行く回数」を別々に考えます。

普段から週に何度も泳ぐ競技者の研究を、週2〜3回の練習へそのまま当てはめることはできません。研究の数字を参考にしつつ、自分の練習記録と大会までの日程を使って、指導者と調整内容を決めていきます。

距離を減らすことと、ゆっくり泳ぐことは違う

「負荷を落とす」には、いくつかの方法があります。たとえば本数を減らすことと、同じ本数をゆっくり泳ぐことは、別の変更です。

変える項目水泳で見る内容変更の例
合計距離や反復する本数同じ距離の反復を10本から6本へ
強度泳ぐ速さや、その練習での運動の強さ設定ペースを変える
頻度1週間の練習回数週3回を週2回へ

表は言葉の違いを示す例で、推奨する削減幅ではありません。10本から6本なら本数は40%減ですが、アップや他のセットを変えなければ、1日の総距離が40%減るわけではありません。

サークルを延ばして休憩を長くする変更も、泳ぐペースを落とす変更とは区別します。同じ総距離でも練習の中身が変わることは、50m×20本と100m×10本の比較で具体例を確認できます。

テーパーで強度を保つという説明は、速い泳ぎの本数まで普段通りにこなす、という意味ではありません。目標とするペースを残しながら、その量を減らす考え方です。レース前だからと、慣れていない全力練習を追加する必要もありません。

「2週間・41〜60%減」は競技者の研究結果

Bosquetらが競技者を対象とする27研究をまとめた2007年のメタ分析では、2週間で練習量を41〜60%減らし、その減らし方を指数関数的にしたうえで、強度と頻度を保つ条件が、成績改善に有効な方法として示されました。指数関数的な削減とは、序盤に大きく減らし、その後は減らす幅を小さくする方法です。メタ分析の要旨

ここで扱われているのは、一定の練習を積んできた競技者の調整です。「大会2週間前になったら、誰でも今の距離を半分にする」という一律の処方ではありません。

個人で参考にするときは、減らす前の量を何で数えるのか確認します。たとえば普段の週合計が6000mなら、その半分は3000mです。ただし、仕事で先週だけ2000mになった人が、その数字を基準にさらに半減させても、同じ調整にはなりません。最近の数週間の実施量と、泳げなかった理由を合わせて見ます。

また、研究の「頻度を保つ」を理由に、いつもよりプールへ行く回数を増やす必要はありません。回数を保てるか、1回の内容を短くできるかは、普段の練習と生活予定を出発点に考えます。

週数回泳ぐ人は、残りの練習日から予定を組む

社会人の調整では、出場日のほかに、仕事、移動、施設の休館日が関わります。大会まで何日あるかに加え、実際に泳げる日が何回あるかをカレンダーへ書いてみてください。

以下は、調整案を指導者へ相談するためのメモです。削減率を当てはめる前に、変更できる部分を見つけます。

相談する情報書き方の例
普段の練習週3回、各回の実際の距離と主なセット
大会まで泳げる日火・木・土。金曜は移動のため泳げない
残したい確認レースペースの泳ぎ、ターン後の動き
最近の状態普段のペースでのきつさ、睡眠、痛みの有無
前回の調整何日前に量を変え、当日はどう泳げたか

「木曜の主な反復を短くする」「土曜は普段練習しているターンを確認する」など、どの日の何を変えるかまで相談できると、予定と実施を比べられます。具体的な距離、本数、速さは、出場種目と今の状態を見た指導者と決めます。

1回欠席したあとに、その分を大会直前へ詰め込むと、当初の調整案とは変わります。予定通りに泳げなかった場合も、埋め合わせを自動的に追加せず、残りの日程で何を優先するか相談してください。

テーパーで何秒縮まるとは決められない

MujikaとPadillaの2003年の総説は、成績改善の目安として約3%に言及しています。ただし、これは個人の次のレースを予測する数字ではなく、2007年のメタ分析から出た「全スイマーの平均短縮率」でもありません。2003年の総説要旨

実際に、平均年齢14.2歳の競泳選手12人を調べた2013年の研究では、2週間のテーパー後、大会成績はシーズンベストと比べて有意に改善しませんでした。これも「テーパーは効かない」という一般的な結論にはできませんが、期間を設ければ必ず一定割合だけ速くなるわけではないことが分かります。Toubekisらの研究

同じ理由で、「身体が軽いから成功」「泳ぎがしっくりこないから失敗」と、体感だけで調整の良否を決めるのは難しいところです。感じたことは残しつつ、練習のタイムやレース結果と一緒に見ます。

痛みや体調不良まで「調整中だからよくあること」と扱わないでください。症状がある場合は練習計画とは別に相談し、無理にスピードを出さないようにします。

調整内容とレース結果を同じノートに残す

次の大会で役立つのは、「テーパーをした」という一言より、何をどれだけ変えたかの記録です。日ごとの距離、主なセットの本数とタイム、休憩、実施しなかった練習を残します。練習ノートの記入例に、大会までの残り日数を足しても構いません。

レース後は、総タイムに加えて前後半や区間タイムを記録します。前半を速く入りすぎたのか、後半まで予定したペースに近かったのかは、ラップタイムの読み方で確認できます。レースが良かった日でも、調整だけが理由だったとは決めず、スタートや配分も振り返ります。

当日のウォーミングアップ時間や招集、移動の準備も、練習量とは別に進めておきます。初めて出る大会なら、大会の持ち物と当日の確認リストを使って、直前に慌てる用事を減らせます。


更新履歴:2026年9月6日、テーパー研究の対象と削減率の扱いを見直し、量・強度・頻度の区別と、週数回泳ぐ人の調整メモを追加しました。

参考資料