
水泳大会のウォームアップ|泳ぐ量と招集までの待ち時間
アッププールで泳いでから、着替えて招集へ向かう。大会では、この移動と待ち時間まで含めてウォームアップを考える必要があります。練習と同じ距離を泳げても、本番前に疲れたり、予定より長く待ったりすれば、同じ準備にはなりません。
普段の練習で試したアップを基準に、泳ぎ終える時刻、速い泳ぎを入れる量、待機中の過ごし方を調整します。 研究で使われた距離や休息時間を、そのまま全員の正解にする必要はありません。
アップの終了時刻は、招集と着替えから逆算する
レース開始の予定時刻だけを見て、「その直前まで泳ごう」と決めると、着替えや招集に間に合わなくなります。2次要項でアッププールの利用時間と招集方法を確認し、自分が水から上がる時刻まで戻って考えます。
次は編集部が作成した、移動時間を見積もるための架空例です。推奨される待ち時間や、実在大会の時刻表ではありません。
| 確認する予定 | 架空の時刻・所要時間 |
|---|---|
| レース開始予定 | 13:00 |
| 招集へ到着する時刻 | 12:40 |
| 着替えと荷物の整理 | 10分 |
| 招集場所までの移動 | 5分 |
| 水から上がる時刻 | 12:25より前を目安に調整 |
この例では、着替えと移動だけで15分必要です。更衣室の混雑やトイレ、着用に時間がかかる水着を考えれば、余裕を追加します。レースまで35分空くからといって、招集を遅らせてよいわけではありません。
招集が「何組前」で案内される大会では、時計とともに現在の種目・組を見ます。進行は予定から前後するため、当日は進行に合わせて予定を調整します。初めての水泳大会の確認リストで、会場案内と持ち物もそろえられます。
泳ぐ距離は、今の練習量に合わせて決める
昔の部活動で行っていたアップが、週に数回泳ぐ今の自分にも合うとは限りません。U.S. Masters Swimmingの大会前のアップの解説も、現在の練習量や体力、出場種目を考えるよう案内しています。
競泳選手20人を対象にした研究では、普段の1000mのアップを行ったときのほうが、アップなしより100m自由形の平均タイムが速くなりました。ただし3人はアップなしのほうが速く、対象は平均年齢が男女とも16歳前後、週8回程度練習する選手です。大人のマスターズ全員に1000mを勧める実験ではありません。Neivaらの原著
内容を考えるときは、練習で使っている楽な泳ぎから入り、動かしにくいところや呼吸を確かめます。レースに近い速さを入れる場合も、慣れた範囲で短く試し、その後に楽に泳げるかを見ます。「予定した本数が残っているから」と、苦しい泳ぎを続ける必要はありません。
速く泳ぐたびに腕の重さや息の乱れが増すなら、次も同じ強度で追加せず、休むか軽い泳ぎへ戻します。不安を消すために本数を増やすより、その日の内容を減らす判断が必要です。痛みや普段と違う強い息苦しさがある場合は、アップを続けて確かめようとせず中止してください。
混んでいるときは、確認する動作を絞る
大会のプールでは、予定したドリルやダッシュを実施できない場合があります。混んだレーンで前の人を追い抜きながら速く泳いでも、レースと同じリズムを確かめるのは難しくなります。
例えば「ターンの壁までの距離を確認したい」「ゴーグルがずれないか確かめたい」と目的を書いておけば、泳ぐ本数を減らしても、その確認ができたかを判断できます。会場で初めての技術を習得しようとせず、練習済みの動作を使います。
2026年の日本マスターズ短水路大会・千葉(習志野)会場は、公式スタート練習の時間と一方通行を指定し、パドルやフィンなどの使用も制限していました。飛び込みに不慣れな人が、その時間に初めて飛び込むことも控えるよう案内しています。同会場の2次要項・3ページ
これは当該会場の例です。出場先の時間、レーン、用具のルールを確認し、当日の通告にも従います。ダッシュの順番が回ってこなければ、招集を削って待ち続けないようにします。周囲との間隔や壁での待ち方は、混雑したプールでのレーン利用も参考になります。
長く待つ日は、濡れた身体を拭いてから衣類を重ねる
アップ後の待ち時間を調べた研究では、男性競泳選手11人が1200m泳いだ後、座って10分待った場合と20分待った場合を比較しています。100m自由形の平均は10分条件で58.41秒、20分条件で59.06秒でした。Neivaらの原著
対象は平均17.4歳の選手で、50m屋内プールでの実験です。この結果から「全員10分前に上がる」「20分を過ぎるとアップが無効」とは言えません。着替えや移動を伴う実際の大会とは条件も違います。
長く待つ予定なら、乾いたタオルと、脱ぎ着しやすい上着などを用意します。水気を拭き、待機場所の暑さ・寒さに合わせて調整してください。U.S. Masters Swimmingも、レース間に着る衣類とタオルの準備を勧めています。招集へ衣類を持ち込めるか、どこで預けるかは会場案内で確認します。
身体を動かす場合も、許可された場所で、普段行っている軽い動きの範囲にとどめます。待ち時間が延びたからといって、急にジャンプや腕立て伏せを増やして埋め合わせる計画にはしません。再び泳ぐなら、利用できるレーンと、着替え・移動を終えて招集に戻れる時間があるかを先に確かめます。
練習日には、泳ぎ終えてからの待ち時間も試す
大会当日に初めて距離や順序を変えると、何が合っていたのか分かりにくくなります。練習日に試すときは、アップを終えてすぐ本番の距離を泳ぐだけでなく、想定する待ち時間を挟んだ場合も確認しておきます。
記録には、アップの総距離と速く泳いだ部分に加えて、次の内容を短く残します。
- 水から上がった時刻と、タイムを測る泳ぎを始めた時刻
- 待機場所、着ていたもの、暑さや寒さ
- 泳ぎ始めの息苦しさ、腕や脚の重さ
- 本番の距離を泳いだタイムと前半の入り方
比較する日は、泳ぐ種目や距離、計測方法もそろえます。タイムが悪かった1回だけでアップの失敗と決めず、直前の練習や睡眠、レース配分も振り返ります。水泳の練習記録に残す項目に追記すれば、次の大会前にも見返せます。
競泳のウォームアップを扱ったレビューでも、研究ごとに方法や種目が異なり、結果の比較には限界があるとされています。Neivaらのレビューを踏まえても、他人の距離をそのまま採用するより、自分の練習と大会で調整を重ねるのが現実的です。
参考資料
- Neiva HP, Marques MC, Barbosa TM, Izquierdo M, Marinho DA. Warm-Up and Performance in Competitive Swimming. Sports Medicine. 2014;44:319–330.
- Neiva HP, Marques MC, Fernandes RJ, Viana JL, Barbosa TM, Marinho DA. Does Warm-Up Have a Beneficial Effect on 100-m Freestyle?. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2014;9:145–150.
- Neiva HP, Marques MC, Barbosa TM, Izquierdo M, Viana JL, Marinho DA. Effects of 10min vs. 20min passive rest after warm-up on 100m freestyle time-trial performance: A randomized crossover study. Journal of Science and Medicine in Sport. 2017;20:81–86.
- U.S. Masters Swimming:How Swimmers Should Warm Up for a Meet、How to Prepare for Your First Swim Meet
- 日本マスターズ水泳協会:2026年度短水路大会 千葉(習志野)会場 2次要項
資料確認日:2026年9月6日。
出典
- Neiva et al.|Warm-Up and Performance in Competitive Swimming
- Neiva et al.|Does Warm-Up Have a Beneficial Effect on 100-m Freestyle?
- Neiva et al.|Effects of 10min vs. 20min passive rest after warm-up on 100m freestyle time-trial performance: A randomized crossover study
- U.S. Masters Swimming|How Swimmers Should Warm Up for a Meet
- U.S. Masters Swimming|How to Prepare for Your First Swim Meet
- 日本マスターズ水泳協会|2026年度日本マスターズ水泳短水路大会 千葉(習志野)会場 2次要項


