バタフライで息を吸った後、腰と脚が下がり、次のひとかきが重い。呼吸しないと泳げても、息を吸うたびにリズムが崩れると、どこを直せばよいか迷います。

見直したいのは、顔を上げる高さと、水へ戻る時期です。ただし、沈んだ場面だけで原因を決めることはできません。腕の戻りやキックも含めて、呼吸の前後を見ます。呼吸回数を減らしたり、息を我慢したりする練習に変える必要はありません。

呼吸を開始するタイミングは肩が水面から上がるタイミングと合わせる

口を水面へ出そうとして頭だけを高く上げると、身体の姿勢を保ちにくくなります。U.S. Masters Swimmingの解説は、腕で水へ圧力をかけ、肩が上がる動きに呼吸を合わせることを案内しています。USMSのタイミング解説

ここでいう呼吸の開始は、顔を水面へ出す動作を始めることです。肩と上半身が上がる動きに合わせて顔を出し、口が水面から出てから息を吸います。「低く呼吸する」と意識しても、口が水中にあるうちは吸おうとしないでください。

バタフライの呼吸を2コマで示した模式図。肩と上半身の浮上に合わせて顔を出し、口が水面から出たら息を吸う。
肩・口・水面の位置関係に絞った模式図です。2コマは続けて行う動きを表し、肩が水面を出る瞬間に必ず吸うという意味ではありません。腕と脚の動きは省略しています。

指導者に見てもらうなら、「頭が高いですか」だけでなく、「肩が上がる前に、顔だけを持ち上げていませんか」と聞くと、見る場面が具体的になります。頭が水面から出た後の静止画だけでは、そこへ至る動きは分かりません。腕をかき始めるところから続けて見るほうが相談しやすくなります。

息を吸いにくい原因を、首の動きだけに絞らないことも大切です。腕を戻す途中で水面に引っかかっているなら、バタフライで腕が水から抜けないときの見方もあわせて確認できます。

腕が入水するとき、顔が水上に残っていないか

呼吸が終わっても前を見続けていると、顔を水へ戻す動作が次のストロークまで残ります。Swim Englandの技術案内では、吸った後は頭を下げ、腕より先に頭が水へ戻る流れを示しています。Swim Englandの呼吸の案内

確認するのは、頭を戻すために首を強く曲げられるかではありません。息を吸う動きが終わった後も顔が上に残っていないか、腕が戻ってくる間に頭も戻り始めているか、という順番です。

たとえば、腕が前に入るときも顔が水上に見える動画なら、顔を戻す時期は指導者に相談する候補になります。ただし、その場面だけを見て「これが腰の沈む唯一の原因」とは言えません。呼吸を急いで終わらせようとして、十分に吸えなくなっていないかも一緒に確かめます。

頭が戻った場面だけでなく、胸まで深く入っていないかも映像に残します。見た目だけを合わせようとせず、次の腕の動きが続くかまで見ると、変更前との違いを捉えやすくなります。

呼吸は、腕とキックのつながりにも関係する

Seifertらは、エリート男性12人のバタフライを複数のペースで撮影し、呼吸するストロークと、しないストロークを比べました。呼吸する条件では、腕と脚の動作の時間関係に差があり、推進動作の連続性を表す指標も変わっています。研究の要旨

この研究は、呼吸すると初心者の腰が何cm沈むかを測った試験ではありません。頭の高さだけを直せば解決する、という結論でもありません。

2025年の研究では、全国レベルの女性選手8人が呼吸頻度の異なる25m泳を行いました。筋活動の組み合わせは似ていても、活動する時期に違いが見られ、研究者は解析時に呼吸頻度をそろえる必要性を示しています。これは、呼吸を減らす練習で誰もが速くなることを確かめた介入試験ではありません。Frontiersの原著

自分の泳ぎを見返すときも、息を吸った場面だけを頭の問題として切り離さず、その前後のキックを映像に残します。キックの位置関係を知りたい場合は、バタフライの2回のキックと腕のタイミングが参考になります。

横からの動画は、呼吸した後のひとかきまで見る

撮影が許可される施設で、他の利用者の邪魔にならない形で指導者などに撮ってもらいます。顔だけでなく、肩、手、腰、足まで入った映像が必要です。水しぶきで口元が見えない場合は、吸った瞬間を映像から断定せず、本人の感覚も聞き合わせます。

次の表は、編集部が作成した観察メモの例です。合格・不合格を決める採点表ではありません。

見る場面残したいこと
顔が水面へ出る前肩と頭が
上がる順番
腕が水上を戻る間頭も水へ
戻り始めたか
次の腕の入水顔が水上に
残ったか
その次のひとかき腕が止まったか、
泳ぎが続いたか

「いつも沈む」だけでなく、「前半はつながるが、後半は顔が残る」「吸えた感じはあるが、戻すときに大きく潜る」と書けば、相談する場面を選べます。動画で見えたことと、自分が感じたことは分けて残します。

変更前後の比較では、呼吸頻度、泳ぐ速さ、フィンなどの道具も記録します。道具やペースを変えた映像同士では、顔を戻した効果だけを取り出せません。練習記録の書き方を使い、指導者からの助言と、その後どう泳げたかを短く残せます。

距離を伸ばすことより、必要な呼吸を取りながら動きを確かめられることを優先します。苦しくて息を我慢し始めるようなら、観察のための泳ぎを続けず、指導者に距離や内容の調整を相談してください。Swim Englandの安全案内も、長い息止めを避け、呼吸したい感覚を無視しないよう求めています。息止め練習に関する安全案内

参考資料